アオ、転落
みんなの掛け声に合わせ、アオは何度も杉を懸命に引っ張り続けました。
「もう少しだアオ、ガンバレー!」
その時です。アオと杉の木をつなぐワイヤーが切れ、アオは崖から足を踏みはずし、真っ逆さまに崖の下へ落ちてしまいました。
「大変だ!早く村の人達を一人でも多く連れてきてくれ。馬は長いこと横になると死んでしまうそうだ」
みんな村のほうへ必死に走りました。しばらくして、村から多くの人々が駆けつけました。
「アオ、大丈夫か!今助けるからな。アオも頑張るんだぞ!」
「おや、何だかアオの呼吸がおかしいんじゃないか?」
アオに近寄ってみると、先ほど逃がしてやったヘビがアオの体の上に乗り、なでるような感じでズルズル、グルグルグルと動いていました。
「さっきのヘビがいるぞ!」
「そんなことより早く起こさないと死んでしまう!」
職人さんは手際よくアオの体に毛布や布を巻くと、その上から太いロープを何重にも巻きつけました。
「みんな、声に合わせて引っ張ってくれ。ソレヨイショ、ヨイショ!」
アオの無事を願いながら、みんなは心を一つにして引っ張りました。その時、アオの足がバタバタ動き、アオは立ち上がったのです。
「アオが生きてたよ!助かった!」
みんなの歓声が上がりました。
「アオ頑張ったね。よかったね!」
アオの体をなでながら「よかったよかった」と、職人さん達も村の人達もみんな泣いていました。なんと、アオは無傷だったのです。
「不思議だなあ。あの崖から落ちて無傷とは。ところであのヘビはまたどこかに行ってしまったのかな。アオの上で異様な動きをしていたな」
手綱を引く職人さんは、アオの体を見てあの不思議なヘビのことをつぶやいていました。