アオ、事なきを得る
「もしかしてあのヘビは神様だったのか?殺さないで良かった」
「宮司の山田様はそれを分かっていたんだよ。だから殺さないで逃がしてやってくれと言っていたんだ」
「山田様も生き神様みたいなお人だからな!」
村で一番尊敬を集める宮司さんと不思議なヘビのことを、みんなざわざわ、ガヤガヤと話していました。
アオが助かったこと、大仕事を終えたことで安堵の表情を浮かべ、みんな笑ったり泣いたりしていました。
「みんなの力でアオは助かりました。本当にありがとうございました」
手綱を引く職人さんはそう言うと、深々と頭を下げました。それを見た私はみんなへの感謝の気持ちで胸がいっぱいになり、子供心に涙が止まりませんでした。
「アオ、家へ帰ろう。歩けるか?」
手綱を取り、職人さんはゆっくりゆっくりアオを気遣いながら歩き出しました。
すると、一人のおばさんが大声でこう呼びかけました。
「みんなでアオを送っていこう!」
みんなも「そうだそうだ」と言って、ぞろぞろと歩き出しました。アオを先頭にまるで大名行列のようでした。
家に着くと、一足先に戻っていた父が玄関先で待っていました。
「皆さんのおかげでアオは助かりました。本当にありがとうございました。アオのあの姿を見た時はもうだめかと思いましたが、皆さんが手際よく手伝ってくれたことで事なきを得ました。皆さんも怪我など無く、本当によかった。食事の用意をしていますので上がっていってください。さあ、どうぞどうぞ」
父は何度も頭を下げてお礼を言うと、みんなを家に招き入れました。
「今日は大変なことが起きたけど、みんな無事で本当によかったね」
みんな笑顔で夕飯を食べ、その日はまあまあ無事に一日が終わりました。