「青馬」と過ごした物語-6.走れ!アオ!

走れ!アオ!

いよいよ寒くなり、雪もちらちら降り始め、冬が訪れました。
朝起きると、夕べ振った雪が子どもの私のひざ上まで積もっていました。
使用人のおじさんが玄関から道路まで雪かきをしてくれ、道をつくってくれました。その時、村人の一人がだいぶ慌てた様子で家に入ってきました。
「こんな朝早くに何事か?」
使用人のおじさんが声をかけると、
「この大雪でバスが一里先で立ち往生している。隣の赤ん坊が夕べから高熱で危ない。町の病院へ行くにも足が無い。羽黒神社のところでバスが待ってくれているようだが、そこまで歩くのは大変だ。馬そりで送ってください。お願いします」
「急いでアオを出してくれ!」
父はそう言うと、使用人は馬小屋へと走りました。
「アオ、大変だ。この大雪でバスが村まで入ってこられないそうだ。村の人々を助けてやってくれ」
使用人の一人がそう言いながら、馬そりにむしろを敷き、七輪に火をおこして、みんなが少しでも暖をとれるよう準備を整えました。
そこへ村人が赤ん坊を抱きかかえて、今にも泣きそうな顔をして「お世話になります。助かります」と、何度も何度も頭を下げて馬そりに乗りました。
全員馬そりに乗り込むと、
「待ってくれ、私も乗せてくれ」
と一人のおばあちゃんが遠くで手を上げていました。使用人の一人が馬そりから降りて走って行き、おばあちゃんをおぶって戻ってきました。
ようやく出発の準備が整いました。
「アオ、急いでくれ!赤ん坊が大変なことになっているからな!」
と、手綱を引くおじさんはアオに話しかけながら手綱をアオのお尻にぽんぽんと軽くあててやると、そのリズムでアオは走り出しました。
吹雪の中、峠を越え走るアオの足音と、首から下げた鈴の音だけがカランカランと静かな山へ響きました。
やっと峠を越えたところで、遠く弘前の町並みが見えてきました。
「あとは坂道を下るだけだ。アオ、もう少しだぞ!頼むぞ!」
ようやくバスが見えると、一人のおじさんが立ち上がって首に巻いた手ぬぐいをはずし、バスに向かって「待ってくれ!」と叫びながら振り回しました。いくら叫んでも届くはずがないのに、よほど赤ん坊のことが心配だったに違いありません。
そんなことを知っているかのように、アオは白い息を吐きながらスピードを上げて走る走る!

やっとの思いでバス停までたどり着き、みんなそれぞれバスに乗り込みました。
「アオ、助かったよ。ありがとう!」
みんなアオと手綱を引くおじさんにお礼の言葉をかけると、やがてバスは町へと出発しました。
そして、みんなを乗せたバスが遠く見えなくなるまで、アオと手綱を引くおじさんは見送りました。

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