アオの異変
アオは懸命に杉の木を引っ張りましたが、生木なのでかなり手こずっているようでした。
杉が少しだけ横になったので、職人さんがワイヤーを結びなおすため杉の下へ近寄りました。
杉の根元をよく見ると大きな空洞があり、覗き込むと何やら動くものが見えました。じっと静かに見ていると、何とそこには大きなヘビが住んでいたのです。
職人さんはあまりの大きさにびっくりして叫びました。
「大変だ!巨大なヘビがいる!」
職人さん達は杉の下に集まり、それぞれの想いを口にしました。
「こんな大きなヘビは今までに見たことがない!」
「危ないから殺すべきか。そうでないと安心して仕事ができないぞ」
「殺すにしてもどうやって?」
ざわざわ、ガヤガヤと騒いでいると一人の職人さんがこう言いました。
「神社の境内にいるヘビだから殺すのはやめたほうがいい。昔からヘビは神の遣いというではないか。殺したらいいことはないぜ」
「そいえばそうだな。俺も子どもの頃はばあちゃんからそんな話を聞いたよ。生き物をむやみに殺したりいじめたりするものじゃないってな」
そこに宮司さんがやってきました。
「どうしました?」
「ああ宮司さん。ものすごく大きなヘビがいるので退治したいと思うのですが、どうしたらいいでしょうね。」
「それは驚いた。どうか殺さないでそっと逃がしてやってください」
「そうですか。わかりました」
職人さん達の話し声が気になったのか、いつの間にかヘビはいなくなっていました。
手綱を引く職人さんがアオに声を掛けました。
「アオ、もう一度頑張ってくれ!左は崖だから落ちないように気をつけるんだぞ。ソレーガンバレー!」
職人さん達の掛け声が響き渡る中、再び杉を引っ張り始めたアオに異変が起きました。