憔悴
アオは、いつものように山へ出掛けました。
「何だか雨が降りそうだな。降らないうちに帰ろう。ハイ!出発」
手綱を引くおじさんの合図に従い、アオは山道を少し焦るように歩き出しました。
「アオ、まだ降らないから急がなくていいよ」
それでもアオは急ぎ足でした。
「なんだ、アオ。どうしたんだ?」
アオは歩き続け、やげて湧き水の出る小川の所で止まりました。そしておいしそうに水を飲み始めました。
「なんだ、水を飲みたかったのか」
おじさんはアオが水を飲む姿を眺めながらたばこに火をつけ、一服し始めました。たばこをふかしながら、おじさんは思いました。
「いつもと何かが違う。様子が変だ」
水をいっぱい飲んだアオ。家に戻り体と足を丁寧に洗ってもらった後、馬小屋に入りました。
少ししてからおじさんが食事を出しましたが、アオは食べようとしませんでした。
「どうした?アオ?」
おじさんは心配そうにアオを見つめました。
その日から、アオはだんだんと痩せていき、仕事に出られない日が続くようになりました。
ある朝、獣医さんや村の人々が馬小屋の前に集まっていました。私は子どもながらに「アオが大変なことになっている」と感じ、裏口の木戸を開け、馬小屋へと走りました。
「アオ!どうしたの?」
私はアオの顔をなでながら叫びました。アオの目からは涙がぽろぽろと流れ落ち、体には点滴の針が何本も刺さっていました。その時、父が獣医さんに言いました。
「私の知人に獣医さんがもう一人います。力を合わせて治療に当たってください。お願いします!」
「アオ、もう一度元気になってよ!」
近所のおばさんがこう叫びながら泣き崩れました。
私も涙が止まりませんでした。