もったいない
父はおじいさんの話を聞き、泣いている姿をじっと見つめていました。しばらくすると、おじいさんは顔を上げて言いました。
「アオはお宅様に飼われ、大事にしていただいている。本当に良かった。アオは元気でいるか、それだけが心配でした。会えて良かった。また会いに来てもいいでしょうか?」
そう言いながら、おじいさんは父に頭を下げて頼みこみました。
「会いたい時はいつでもおいでください。アオも喜ぶでしょう。アオは本当によく働いてくれています。木材を運ぶ仕事は最も過酷ですが、先頭に立って全部やってくれています」
アオの活躍ぶりを、父はおじいさんに話しました。
「アオは我が家の大黒柱であり宝です。アオが来てくれてから、立ち上げた事業はすべて良い方向に進んでいます。自分の力や努力だけで、こう、うまく事が運ぶものかと不思議に思いました。その時、アオは不思議な力を持っている馬だと気づいたのです。この大切な宝をくれたのはあなた様です。事業を成功に導いてくれたのはアオとあなた様なのです。このご縁に私は大変感謝しています。本当にありがとうございます」
父はそう言うと、おじいさんに深々とお辞儀をしました。
「私にできることがあれば何でも協力します。どうぞ遠慮なく話しに来てください。力になります」
そう言いながら、父はおじいさんの手を握りしめました。
「こんな私にもったない言葉を、本当にありがとうございます。ありがとうございます-」
おじいさんは涙ながらに父の手を両手で握り、しばらく離そうとしませんでした。
「アオはもちろん、これからはあなた様も私達の家族ですから」
父の言葉に、おじいさんは「もったいない、もったいない」と泣きながら言いました。