突然の再会
「ごめんください」
ある日、見知らぬ一人のおじいさんがアオを訪ねてきました。
「馬を見せてくれませんか?」
「はあ、どうぞ」
突然の訪問客に手綱を引くおじさんはびっくりした様子でした。アオは気持ちよさそうに眠っていましたが、話し声が聞こえたのか、目を覚ますと、くるくる回ったりしっぽを左右に振ったりといつもと違う動きを始めました。
見知らぬおじいさんはアオに近寄り、こう話しかけました。
「アオ、覚えているか?もう忘れてしまったかな・・・・・」
アオはおじいさんの目を見つめました。おじいさんはアオの顔をなでてやると、アオはおじいさんの顔をそっと頬ずりしました。
「そうか、覚えてくれていたか」
おじいさんはとうとううつむいたまま、なかなか顔を上げませんでした。
「アオ、悪かった!許してくれ!」
おじいさんはとうとう泣き崩れてしまいました。その姿を見て、手綱を引くおじさんが声をかけました。
「どうぞ、こちらにお座りください」
おじいさんは涙を拭きながら立ち上がりました。そこへ父がやってきました。おじいさんは帽子を脱ぎ、父にお辞儀をしました。父はおじいさんを家に招き入れると、色んな話を始めました。実は、このおじいさんはアオの元飼い主だったのです。
「これからは日本にも自動車の時代が来る。農機具も次から次へと新しくて便利なものが誕生している。もう馬はいらない-」
今から何年も前、おじいさんはそう思い立つと、若かったアオを手放して大きな事業を始めました。しかし、全て大失敗に終わりました。
「アオが働いてくれた頃は本当に何をやっても成功した。振り返れば、アオが私達一家を支えてくれていた。それなのに私はアオに心無いことをした。あれから何年もたったのにアオは私のことを忘れないでくれていた。こんなばかな私のことを・・・・」
おじいさんはまた泣き出してしまいました。